世界農業遺産認定
世界農業遺産認定「みなべ・田辺の梅システム」 ~次世代につなぐ、世界に誇るべき「農業システム」~
みなべ・田辺の梅システムとは
養分に乏しく礫質で崩れやすい斜面を活用して薪炭林を残しつつ梅林を配置し、400年にわたり高品質な梅を持続的に生産してきた農業システムです。
人々は、里山の斜面を梅林として活用し、その周辺に薪炭林を残すことで、水源涵養(※)や崩落防止等の機能をもたせ、薪炭林に住むニホンミツバチを利用した梅の受粉、長い梅栽培の歴史の中で培われた遺伝子資源、薪炭林のウバメガシを活用した製炭など、地域の資源を有効に活用して、梅を中心とした農業を行い、生活を支えてきました。また、人々のそうした活動は、生物多様性、独特の景観、農文化を育んできました。
※水源涵養とは・・・森林の土壌が、雨水を吸収して水源を保つとともに、河川へ流れ込む水の量を調整して洪水を防止する機能。
世界農業遺産(GIAHS)とは
国際連合食糧農業機関(FAO、本部イタリア・ローマ)が2002年に開始した仕組みで、次世代に受け継がれるべき重要な伝統的農業(林業、水産業を含む)、農村文化、農業景観などを全体として認定し、その保全と持続的な活用を図るものです。こでまで、世界15か国36地域、日本では「みなべ・田辺」を含め8地域が認定されています。
国際連合食糧農業機関(FAO)が示す5つの認定基準
- 食料及び生計の保障
- 暮らしを支える梅産業(就労人口の約70%が梅生産・関連産業に従事/生産、加工、観光等が連携、約700億円の梅産業)
- 最高級炭「紀州備長炭」を生み出す製炭業
- 水稲、野菜、柑橘など多様な農産物の生産
- 生物多様性及び生態系機能
- 薪炭林、梅林、水辺環境により保持される生物多様性
- 梅とニホンミツバチの共生関係
- 農業の多様性(梅栽培の多様性・梅との複合経営品目としての多様な農産物)
- 知識システム及び適応技術
- 梅の多様な遺伝子資源と優良品種育成
- 梅栽培の伝統技術
- 地域で発展した梅干加工技術
- 資源を持続的に利用する独自の薪炭林管理技術「択伐」(たくばつ)
- 文化・価値観及び社会組織
- 梅に関連した祭事・行事
- 梅の伝統的食文化
- 梅の育まれた地域の「絆」
- 優れた景観及び土地と水資源管理の特徴
- 季節により変化する梅林景観
- 薪炭林と梅林による急峻な地形の利用(薪炭林の水源涵養、防災機能/梅林での草生栽培による表土の保護等)
- 「択伐」による独特の薪炭林管理法